「だけど、手紙とハンカチはお父さんとお母さんに届いたってエメットが言ってたじゃない? しかも、他のは届いてないのに、初めて届いたって……」

「それが、あの日……わたくしはランスロット様の元へと向かう道すがら、ゼルリダ様にお会いして…………。ゼルリダ様が、姫様のお手紙を預かると、そう仰ったのです。わたくし、どうしても断りきることが出来なくて」


 その瞬間、ドクンと音を立てて心臓が跳ねる。エリーはようやく顔を上げ、ポロポロと涙を零した。


「言わなければと……姫様に謝らなければならないと、ずっとそう思っておりました。けれど、どうしても言い出せなくて……。
わたくしは姫様を落胆させたくなかったのです。あんなにも一所懸命、ご両親に向けて刺繍をされた姫様に、それがお届けできなくなったとは、とても申し上げられなくて……。
本当に、申し訳ございませんでした!」


 エリーはもう一度、床に擦りつけんばかりに頭を下げる。
 底知れぬ怒りがわたしの胸を焼いた。けれど怒りの矛先はエリーではない。もっと別の――――元凶である人間へと向かっていた。


(おじいちゃん……!)


 気づいたらわたしは、応接室を飛び出していた。