甘く、溶ける、君に。




スマホの画面には11:25と表示されている。お昼は絵凪だし、これは譲れないし、帰りまであと何時間もある。長すぎ。


なんの用もないけれど、メッセージ送ってみようかな。ていうか何か来たりしないかな。千輝からメッセージ。

あたしと同じように、帰りまで顔を合わせられないのが待ちきれなくなってないかな。



ぐるぐる考えながらスマホの画面を眺めて念じていたからか、ピコンという音とともにメッセージの通知。差出人は“井上千輝”。ああ、念届いてるかも。



自分でもわかるくらい口角が上がっているから、きっと周りから見たら不審者でしかない。ここが教室という空間のおかげでなんとか耐えている気がする。




『4限、サボろっか』




この上なく嬉しい待ち望んだ、わるいお誘い。授業をサボるのはわるいこと。けれど今わたしは死にかけの大ピンチ。喜んで乗っかろう。



学校で2人でこっそり会う時の場所は決まっている。2階の空き教室。休み時間の残り5分は焦がれた相手との移動時間。



「行ってきます」とだけ言ったら田邊は全てを察したようでため息をつきながらも笑って手をひらりと送り出してくれた。