「日和も早く食べなよ。溶けちゃうよ」
「う、うん」
急に俺のほうを向くからびっくりした。
夏奈から顔ごと逸らして、俺もアイスを食べ始める。
アイスの冷たさのおかげで、少し冷静になれた。
それから目的もなく歩くけど、どこに行っても見える景色全部に夏奈との思い出がよみがえってくる。
いつもはこんなこと思わない。
夏奈のせいだ。
こんなことばかり考えるのは。
夏奈との思い出をひとつひとつ振り返ってしまうのは。
こんなにセンチメンタルな気分になってしまうのは。
夏奈が、俺から離れてしまうせいだ。
気持ちがぐちゃぐちゃだけど、思い出の詰まったこの道は、どれも楽しいことだけを思い出させる。
夏奈と一緒にいて、楽しくなかったことなんてなかったから。



