【短】夏のせい、君のせい。




「ありがとう」

「どういたしまして!」



この夏の太陽に負けないくらいの笑顔。

むしろ勝ってる。

夏奈は本当に夏みたいな人だ。


名前にも夏がついているけどそうじゃなくて、カラッとした爽やかな明るさと眩しさがある。

どこにいても夏奈は中心で、みんなの主人公という感じだ。

もちろん、俺にとっても。


外に出ると、またジリジリと痛いくらいの強い日差し。

ペットボトルのキャップを開け、水をいっきに流し込んで喉を潤した。



「これもあるよ。はんぶんこしよ」



ビニール袋から出したのはアイス。

ふたりで分け合えるようになっている、かわいい名前のあの有名なやつ。

もちろんチョココーヒー味。
なんだかんだ、チョココーヒー味が安定だと思う。

新しい味が登場するたびにふたりで買って、ふたりではんぶんこにした。

どれもおいしいけど、やっぱりここに戻ってくる。

そんな話だって、もう何回もした。
何度も繰り返した。

これも、夏奈との他愛ない思い出のひとつ。

アイスひとつにも、当たり前のように思い出が詰まっている。



「どうぞ」

「ありがとう」

「どういたしまして!」



数秒前と同じやりとり。

こんな時でも、夏奈は変わらない。

やっぱり変わらない。


行儀が悪いけど、アイスを食べながら歩く夏奈。

中学一年生までは夏奈のほうが身長も高かったけど、今では俺のほうが頭一つ分くらい高い。

夏の爽やかな風が、おいしそうにアイスを食べる夏奈の長い髪を揺らす。


小さい頃からずっとショートカットで、それが夏奈という感じだったけど、中学卒業と同時に髪を伸ばす宣言をした。

宣言通り、茶色がかった髪をきれいに伸ばしている。