【短】夏のせい、君のせい。



「ごめんね、日和」



無理して作った笑顔は、泣いているようにしか見えなかった。


……俺が言いたかった言葉は、これなのだろうか。

夏奈に伝えたいことは、夏奈を困らせるようなものだったのだろうか。

モヤモヤを夏奈のせいにして、困らせて、悲しませて、俺は満足できたのだろうか。

これで終わりにできるのだろうか。


俺が本当に伝えたかったことは、夏の太陽のような夏奈の笑顔を濡らす言葉だったのだろうか。




──違う。
違う違う違う。

そんなんじゃない。

俺が伝えたいのはこんなことじゃない。




「……本当は、気づけなかったことが悔しい」



言ってもらえなかったことに、腹を立てているんじゃない。
そんな小さい話じゃないんだ。



「寂しがり屋な君なのに、気づいてあげられなかったことが悔しい。ずっと傍にいたのに。ひとりで苦しんでいたのに」



俺は、そのことに気づけなかった。

もっと早くに気づいてあげるべきだったのに。
君が隠していたことを。

傍にいることが当たり前すぎて気づけなかった。
そんなの言い訳にもならない。

情けない自分が嫌になる。



「気づけなくて、ごめん」