「……もっと早く言ってほしかった」
「……うん」
「これからも一緒なんて嘘だ。夏奈は俺から離れていく」
「……うん」
「夏奈の隣には並べなくなる」
「……うん」
俺の言葉に夏奈はただ頷くだけ。
けど、その相槌でさえ震えているように聞こえるのは気のせいだろうか。
夏奈は強い瞳で俺を見つめたまま。
「俺を、置いていくんだな」
「っ……うん」
夏奈の瞳が大きく揺れる。
俺は意地悪だ。
夏奈が困るとわかって、こんなことを言っている。
困らせようと思って、言っている。
八つ当たりだろうか。
ずっと黙っていたから。
俺に隠していたことに対して、腹を立てているんだろうか。
「……ごめんね」
揺れる瞳をまっすぐに向けたまま発された弱々しい声は、葉っぱの擦れる音にかき消された。
夏奈が困っている。
夏の太陽のように明るくて眩しい夏奈の笑顔が、今はどこにもない。
俺がした。
それを望んで、言葉を選んだ。



