【短】夏のせい、君のせい。



「わたしたち、ずっと一緒にいたね」

「そうだね」

「でも、これからも一緒だよ」

「………は?」



それには頷くことができなかった。

何を言ってるんだよ。


『これからも一緒』だって?


夏奈は、何を言っているんだ。

嘘つくなよ。
一緒じゃないだろ。

夏奈はいなくなるんじゃないか。

俺の前から、俺の傍から、いなくなるくせに。

生まれる前から一緒で、生まれてからもずっと一緒で、これからも一緒だと思っていた。


だけど、夏奈はいなくなる。

俺を置いて、遠くへ行ってしまうんじゃないか……。

言いたい気持ちをすべて、深い部分に押し込める。



「どうしたの?」

「……別に」



俺の反応に不思議に思ったのか、顔をこちらに向けた。そのせいで、まっすぐな強い瞳にぶつかる。

この瞳に俺は弱い。

吸い込まれそうになって、いつでも時間が止まったようになる。

夏奈は俺の考えていることをすべて見透かしているように思う。

心の奥底の、俺の汚い部分まですべて。

だから夏奈のこの瞳は、あまり好きじゃない。