貴方が手にしているのは小金じゃないでしょ、と言いかけて気が付いた。
 
 何も欠けたものがないように見えるカーティスなのに、本人は貴族じゃない事を気にして卑下している。


 裕福じゃなくても、子爵令嬢のマリオン。
 お金に苦労してないけれど、平民のカーティス。


 実家が商売をしていて、貴方と近い環境で育ってきているのは私なのに。
 家業の人脈で、王都には知り合いも多い。
 これから貴方の側で、将来貴方の為に手助け出来るのは私なのに。


 これからカーティスはお店をオープンさせるまで何度も王都に通うだろう。
 もしかしたら、またマリオンに会いに行くつもりかも知れない。

 就職先は教えてしまった。
 スコットも同じ研究所で働いている、と教えたら少しだけ眉をひそめていた。


 もう悠長に、時間はかけられない。
 再び、彼がマリオンに会おうとする前に。




「この前、友達から聞いたんだけど。
 マリオンはスコットと婚約したみたい」


 私は勝負に出ることにした。