それに……グレイグ・オニールが時々、私を見ているのにも気付いていた。


 仕事の合間のおしゃべりが聞こえてきて、彼が
毎日の夕食に誰かを誘っている事を知った。
 しかし周囲の友人達も度重なる誘いに段々と断り始めているから、とうとう自炊に突入になる、と愚痴っていた。

 奥さんの実家は隣の市なんだから食べさせて貰いに行けよ、と言われて、渋っている感じも見えて。


 奥さんと子供が戻ってくる前なら。
 私から誘ったら、ホイホイ来そうな気がした。
 終わりが見えていて、お互いに別れるのも後腐れなくて、丁度いい男だと思った。



 それで……グレイグと寝た。
 簡単に私は女としての誇りを取り戻す事が出来た。
 カーティスから受ける傷を、グレイグに修復して貰っていた。



 もう、これ以上カーティスに近づくことはないのかもしれない。
 ガーランドに来て、1年以上が経って、少しも
縮まらないカーティスとの関係に私が諦め出した頃。

 珍しく、彼から話題が出た。


「来年、王都に店を出すことにしたんだ」

「レストラン?」

「王都では貴族が利用する高級レストランか、
労働者階級が通う安い酒場かの2極が多いから、その間を狙っている」

「その間……」

「中間層の小金を持った平民……
 俺達みたいな、ね」