『人から聞いた話だけど……』
『そういう噂があるらしいけど……』

 そう前置きして、適当にマリオンの話をする。
 そうでもしないと、カーティスは私と会わなくなるのが、わかっていたから。


 マリオンの友人だから会う。
 その関係性をいつかは止めて、私個人を見てくれる日が来ることを、ずっと願っていた。




「私も今夜暇なんです
 夕食連れていってくれませんか?」


 ある日、職場の先輩グレイグを誘ってみた。
 彼の奥さんは出産が近いので、隣の市の実家に
帰っていると聞いたから。

 余りのカーティスの冷たさに、私は女としての
自信がなくなってきていて。
 久しぶりに違う男性から優しくされたかった。


 ガーランドで就職して、狙いはカーティスひとりに絞っていたから、他に知り合いなんて作っていなかった。

 職場の男の中で一番若くて、ちょっと見た目がましだったから誘ってみただけだ。