ウチは子爵家でそんなに裕福ではないのに、父は貴族の矜持(と、本人は言っている) に拘っていて。
 羽振りのよい商会の息子が、平民でありながら卒業生代表になったことが悔しいのだ。


 その人の名字が確か、ブルーベルだった。
 彼とジュリアが付き合っていたの?



「卒業しちゃって、前程自由に会えなくなった
みたいでさ。
 兄貴からお姉さん宛の手紙預かってきてて」


 ……あぁ、それでなのかと納得した。
 こんなに目立つひとが私に用がある、なんて。
 可笑しいと思っていた。

 初めて間近に見たカーティス・ブルーベルは、やはり美しくて目のやり場に困るけれど。
 変な期待がなくなったので肩から力が抜けた私。



 姉は家族からの反対を怖れて、私にもキーナンさんとのことを話せなかったみたいで、カーティス経由の恋人からの手紙を私が差し出すと、大きな瞳を潤ませた。


「ありがとう、マリオン。
 貴女を巻き込みたくなかったけれど、私からの手紙をお願い出来る?」

「もちろん!」