義兄はもしかしたら、姉に話さないかも知れない。

 かつての恋人は裏切っていなかったのだ、と。  
 妊娠中の妻に教えたくなくて、指輪ごと握りつぶしてしまうかも知れない。



 私はどちらでも、構わなかった。
 人は秘密を抱えて生きていくには弱すぎる。

 だから、結局カーティスは私に話して。
『君に任せる』と言い。
 私は義兄に丸投げした。



 義兄もそれがわかっている。
 だが彼は、全てを隠さずジュリアに話した。
 
 デイビッドは強いひとだ。
 聞かされたことで再びジュリアの心が不安定になっても、何もかも受け入れるつもりだったのだ。



 それを知ったのは、王都に戻る前夜。
 部屋の整理をしていたら、目を赤くしたジュリアがやって来たからだ。


「デイビッドから、キーナンの話は聞いたわ。
 ……指輪も受け取ったわ。
 貴女、今カーティスと会っているのね?」

「……会うと言っても、そんな関係ではないわ。
 彼は私の知り合いと、来年結婚するの」



 私の返事を聞いて、ジュリアの顔が強張った。