コーカス高等学園に入学して2週間が過ぎた頃、私の教室に彼が現れた。


 カーティス・ブルーベル。
 大繁盛のブルーベル商会の息子。

 背が高く、サラサラとした銀色の髪と蒼い瞳が
印象的な彼は入学当初からとても目立っていて。

『綺麗な顔をした男の子』と早くも学園の有名人になっていた。


 彼がどの授業を選択したのだとか。
 今日は食堂で何を食べていたのだとか。

 あらゆる彼の話題が、毎日女生徒の間で飛び交っていたので。
 そんな彼が私の名前を告げて、呼び出された時は喜びよりも驚きの方が大きかった。



「いきなりで、ごめん。
 君のお姉さん、ジュリアさんだったよね?
 俺はキーナンの弟なんだ」


 そう自己紹介されたが、キーナンという名前に
聞き覚えはなかった。
 が、姉の同級生なら、と思い当たった。



 貴族の令息令嬢を差し置いて、首席卒業で答辞
を読んだひと。
 姉の卒業式に出席した父が、そう忌々しげに
言っていた。