あの頃からあなただけが好きでした


 バージルは子供の頃からウチの商会で働いている子飼いだ。

 キーナンとは同い年で、初等学校までは一緒に通っていた。
 中等学校卒業後は商会の経理で、一心に頑張って親父を支えてくれていた。
 親父は信頼しているバージルの言葉を信じた。



 それに加えて。
 兄が売上を横領していた、らしい。

 ルイーザとふたりで逃げる為にお金を盗んだのだ、と考えられた。
 親父が泣くところを見たのは、祖母が死んだ日以来だった。
『はした金を盗みやがって』と、親父は泣いた。


『あの馬鹿が盗んだのは金だけじゃない。
 ウチの……商会の信用を盗みやがって』


 キーナンはルイーザとふたりだけで逃げたのではなかった。
 彼女の幼い息子も連れて、3人で逃げた。

 ルイーザの夫は酒癖が悪くてギャブルに目がない、と評判は最悪で、商会で働いて家計を支えていたルイーザは良妻と言われていたのに。
 男と逃げたと知られた途端に悪妻と呼ばれるようになった。


 これはルイーザの姑、夫の母親が触れ回ったからだ。


『ウチの跡取りの可愛い孫まで、ブルーベルに
盗まれたんだ』


 何が跡取りだ、マクガバン家は貧乏な平民だ。
 自分の息子の出来が悪くて、嫁が苦労しているのにも知らん顔していたババアなのに、あちこちでそう言って泣いたのだ。