フラフラと立ち上がった私に、クレアが。
 大丈夫なの? と声をかける。
 その声は楽しさを隠しきれていない。
 私は返事をせず、化粧室に向かった。


 体勢を立て直したい。
 ぺしゃんこになった私の姿を、このままふたりの前に晒したくはない。


 すっかり酔いから醒めている。
 鏡の前で化粧を直して、気合いを入れる。
 クレアはともかくとして、カーティスから悪意を向けられる謂れはない。


 ふたりが出会ったのが王都なのか、故郷コーカスなのか、知らないけれど。
 私という存在がふたりを結びつけたのなら。
 向けられた悪意には、それなりに対処をする。


 化粧室を出たところで、カーティスが立っていた。


「君、まだ独身だったんだな」

 恋人のいないところで、女に声をかけてくるようなひとではない、と思っていたのに。



 私が3年間見ていたカーティスは。

 もう何処にも居ない……これが現実。