カップルの横に居たら、だんだん寂しくなってくる。
 あの女は誰かに女性として、求められたかったんだ。


「アイツの本性に気が付いて泣いて助けを求めてきても、もう知らん顔してやるからな」


 文句を言うスコットは出会った頃の少年のまま。
 そんな事を言っても、マリオンが泣いたら受け
入れるだろ?
 お前は知らん顔なんて、出来ない。


 だが、カーティス・ブルーベルは2度とマリオンを離さない。
 何年もかけたあの男の執着から、もうマリオンは逃げられない。


 ……正しくは現在のマリオンに対しての執着心ではないだろう。

 あれは『あの頃』に対しての執着だ。
 兄貴が生きていて、毎日が楽しかった頃。
 カーティス・ブルーベルは『あの頃』が忘れられない。


 兄貴が手に出来なかったもの。
 冷たい言い方になるが、マリオンはその象徴でしかない。


 恐らく今までと同じようにはマリオンはスコットと会えない。
 何ヵ月か先に、あのレストランが落ち着けば、アイツはマリオンをここから連れ去るだろう。
 
 そして、マリオンは喜んで連れ去られる。