「あり得ないだろ……」

 マリオンの後ろ姿を見送って、スコットが独り言のように呟くのが聞こえた。
 去り行くマリオンに向けた言葉だが、声が小さすぎて彼女には届いていない。
 そして俺を振り返った。


「なぁ、これってほっといていいのか!
 あの男もおかしいけど、マリオンだっておかしいだろ?」

「……マリオンがいい、って言うんだから」

「仕事辞めるまで、言ってるんだぞ!」


 俺の前でそんな、恋人に捨てられた様な顔をするな。
 こっちはあの女が居なくなって、せいせいしてるのに。
 勿論、スコットにそれを悟らせたりしないけど。


 あの女、マリオンの背中を俺は押してやった。
 大切な友達を思いやる優しい顔をするのは、得意だ。