「……」

「アイツの手を離して、後悔しない?
 さすがに今回君に振られたら、もうブルーベルは会いに来ないだろうな」

「……これが最後なのは、わかってるの」

「運命ってさ、思ってたってなかなか言えないよな。
 だけど俺は、俺の運命の相手のスコットと結ばれることが出来たし。
 俺から見たら……彼は君の運命の相手に思えるよ」


 ブレナーはそう言って立ち上がり、テーブルの向こうからこちらに回ってきて、私の前に跪いた。


「俺の子犬であり、妹であり、大切な友人である君に。
 後悔はして欲しくないし、何より幸せになって欲しい」

 
 その言葉が心に沁みて……冷えかけて胸につかえていた塊を溶かしていくみたいだった。 
 ブレナーの前で泣くのは初めてだった。

 彼は私を抱き締めて背中をゆっくり撫でてくれた。
 それは昔、泣いた姉を慰める為に私がした動作と同じ。


「明日、彼が迎えに来てくれるの……
 今度こそ私、幸せになれるのよね?」

 答えるようにブレナーがぎゅっと抱き締めてくれる。


「スコットとふたりで、君をずっと見守っているから。
 心配しないで、アイツのところに行けばいい。
 駄目だったら、帰っておいで」