いきなりやって来たクレアから何を言われたのか、その時はよく聞き取れなかった。


「よくも、しれっと来れたわね!
 今更しゃしゃり出てこないでよ!」


 そう言われたのだと、後からトリシアが教えてくれた。
 クレアから腕を掴まれて、ののしられて。


 私の意識は目の前のクレアに集中していた。
 そこで背中から誰かに突き飛ばされて。 
 急な衝撃でよろめいたところを、カーティスに助けられた。


 彼の顔が間近に見えて、お礼を取り敢えず言うべきかなと思ったら、クレアが悲鳴を上げて。

 するとカーティスが私から離れて、テーブルクロスをひっぱって。
 色々な叫び声と悲鳴と、料理が飛び、グラスや食器が落ちて砕けた。


 そして……私を突き飛ばした人にクレアが襲われて、ナイフで刺されたのだと知った。

 血の気の無い真っ白な彼女の顔と切られた頬の傷と血だまりが見え……


 クレアの泣きながら痛がる声と。
 カーティスに頭上から掛けられたテーブルクロスごと拘束されて狂ったように叫んでいる男の声を聞きたくなくて耳を塞いでいたけれど。

 痛みと恐怖に震えているクレアから目をそらすことは出来なくて。