周囲の招待客や親族が全員俺達を見ていた。

 クレアは泣きそうな顔でブルーベル達が居る入口に目をやって、いきなり走り出した。
 慌てて妹を止めようとしたが、一歩遅れてしまった。


 既に店内は招待客や給仕の者でごった返していてそんな中で、人にぶつかりながら進むクレアは
異常だった。

 そして立っていた集団の中に居た女性に、何事か叫んで掴みかかったのが、かろうじて見えた。


『ここでこれ以上、騒ぎを起こすつもりか!』


 頭のおかしな妹にいささかげんなりして、周囲に頭を下げながらクレアを止めようとして。

 次に俺が見たのは、妹がわめいている男に腕を掴まれている姿だ。
 興奮している男が何かを振り上げ、クレアの頭上に煌めく物が見えた、と思ったら。


 クレアの短い叫び声が聞こえ、周りの悲鳴や怒号にかき消された。