カーティスは王都ではホテル住まいになるらしい。
 移住ではないようなのでホッとして、教えて貰ったホテルに彼を訪ねる。


 フロントが連絡して、ロビーに彼が降りてくる。
 実家には王都に帰ってきたことは知らせていない。
 押し掛けた彼の部屋で、週末を過ごすつもりだった。


 夕食を外で取ろう、と彼が私の背中を押した。


「待って、荷物だけでも部屋に置きにいきたいの」

「部屋?このホテルに取ったのか?
 今夜は実家に帰るんじゃないの?」


 これで彼が自分の部屋に、私を泊める気がなかったことがわかった。
 怒りと屈辱で震えそうになる。


 この男は……歩み寄る気なんて少しも無い。
 私との偽装婚を了承したのではないの?
 婚約者として人前で扱うんじゃないの?

 どこまで私を愚弄するの?