王都に進出すると決めたのは、キーナンの為だ。

 あんな最期を迎える前、ブルーベル商会の経理の仕事をしながら、兄は王都に出た友人達と何度も会っていた。
 親父は商会の店舗を構えるつもりでいたが、兄は飲食店を開きたがっていたのだ。


 兄の遺体が見つかり、葬式はコーカスで行った。
 ブルーベル家の現在の拠点のガーランドではなく……
 嫡男の悪評から撤退した街で、親父は葬式を行った。


 大きな式ではなく、本当にキーナンと親しくしていた人達だけを招いたお別れの会。
 それは息子を信じきれなかった自分を、罰しているようにも見えた。
 だが、俺も同じだ。


 バージルの言葉に踊らされて、キーナンの足取りを調べることさえしなかった。
 あんなにも身近な場所で、兄は眠っていたのに。


 式に参列してくれたキーナンの友人達から、兄の夢だったレストランの話を聞いた。

 レストランの開店とマリオンの事は関係なかったが、落ち着いたら。
 また、会いに行こうと思っていた。