祖父母の家から戻ると、ヨリはこれまでの編集作業に取り掛かる。

 あかりは育成の最終段階が開始されるまでに荷造りを終わらせたい。祖父母に相談し、また一緒に暮らす事としたのだ。

 ヨリは配信のネタが撮れ、あかりは祖父母と和解する。思い付きの帰省であったが結果オーライだろう。

 ヨリは編集作業の合間に他愛もないメールをくれるようになり、それを待ち遠しく感じ出した自分に気付いた時、あかりはヨリスが自己投影しやすくなる為にも彼の近くに居ない方がいいと考える。

 田舎に帰ってお見合い結婚するのに以前ほどの抵抗を感じなくなり、それは恋人と人生のパートナーは別、ひとりの男性に全部求めるのは無理だからかもしれない。

【大人気ゲーム配信者ヨリが極秘結婚?】

 引っ越しの前日、あかりの目にこんなニュースが飛び込んできた。

【ヨリはかねてから交際していたAさんとウェディングフォトを撮影した。撮影場所は業界人御用達の某サロン、定休日に関わらずヨリと親交のあるスタイリストが出勤する様子や、Aさんの物と思われるドレスを搬入する現場も同誌は写真に収める】

「誰がこんな事を?」

 あかりは記事に添えらた写真を見て、愕然とする。居ても立っても居られなくなり、ヨリのマンションへ向った。

 ヨリのマンションの周りには記者と思われる人達が集まっていたが、幸いあかりは注目されず中に入る事が出来た。
 写真に映るウェディングドレス姿と普段着との落差があって成り立つ擦り抜け術といえる。

 最上階に着くと緊急事態とあって、ヨリの関係者が居た。事態の対応に追われ、慌ただしい。

「あなた?」

 あかりに気が付いたひとりが鋭い視線を寄越す。

「あなた、元宮あかりさんですよね? どうして此方へ?」
「ヨリさんに今から行くと連絡して、セキュリティを解除してもらったんです」
「鍵の開け方を聞いたのではないですよ。何をしにいらっしゃったのかと尋ねているんです!」

 怒鳴り声に周囲がしん、となる。すると誰かが「写真を流出させたのは彼女じゃないのか?」と疑い、同調の波が起きた。

「わ、私じゃありません! あの記事は企画だって説明すれば誤解は解けると思います!」
「あなたは全然分かってない! ヨリの支持層は女性。スキャンダルは致命傷なんだ。どうせ噂になるなら女優やモデルにしてくれないと格好すらつかないよ!」
「……だから説明を」
「説明、説明と言うなら、あなたが外で張り込む記者達に経緯を説明してきて下さい!」
「ーーオレが説明するから」

 ヨリだった。