強くてニューゲームな契約彼氏ー恋も愛も無理ゲーではありません

 あかりにだって同年代が抱える悩みは存在する。
 そうと分かれば、猪突猛進するあかりと婚期を意識するあかりを天秤にかけ、視聴率が稼げそうな彼女へ傾けるのがヨリの仕事だ。

「うん、おかしくなんかない。オレ、結婚はいまいちイメージがわかないけど、ウェディングドレスっていいなぁと思う」
「は、はい、私もウェディングドレスを着たかったんです!」

 狙い通り、あかりからこの言葉を引き出したヨリは微笑む。育成の二段回目が【希望を叶えて自信をつけさせる】がテーマだからだ。

 撮影はここで一時中断する。

「よし、休憩しよう」

 ヨリは携帯電話を放って背伸びをした。またヘソが覗き、ダルそうな気配を身に纏う。彼のオンオフの切り替えがはっきりしている。

「私、ちゃんとやれたでしょうか?」
「平気、平気。お姉さんは撮れ高なんて気にする必要ないーーあ、名前聞いたけど呼び方はお姉さんにしておく。動画内もお姉さん呼びする」

 ホワイトボードにある育成一段回目の欄へ横線が引かれた。

「ところで、何故お姉さん呼びにするか分かる?」
「個人情報だからですか?」
「それもあるけどリスナーに没入感を与える効果を狙ってるの。お姉さん、恋愛シュミレーションゲームとかやる? てかゲーム自体やる?」

 その昔、祖父母の家でゲームをした記憶があるにはあるが、人気実況配信者には言いにくい。あかりは首を横に振った。

「恋愛シュミレーションゲームは主人公の名前が変えられて、顔も隠してある作品が多いんだ。プレイヤーが自己投影しやすい配慮ってやつ」
「自己投影……」
「まっ、難しく考えないで。それよりお腹空かない? 着替えてピザでも食べようよ」