強くてニューゲームな契約彼氏ー恋も愛も無理ゲーではありません


「それじゃあ、最初にお姉さんの事を教えて。名前と年齢から」
「え? えっ?」
「編集で都合悪い部分は切るし、自然体で答えて大丈夫」

 スイッチを入れたようにヨリは声音を変え、あかりの背後に回る。
 強張る肩をポンポン叩き、アドバイスを耳元で囁く。

 ゲーム実況に限らず、声は配信者の武器だろう。この点、ヨリは効果的な使い分けが出来ている。
 勿論ルックスが良い事に越した事はないが、チャンネルを画面で追うよりラジオ感覚で流したり、何かしながら視聴するリスナーも居るため声色は重要だ。

 また声と同様に言葉遣いも大切。場にそぐわないワードを選び、炎上してしまう配信者は少なくない。

「元宮あかり、29歳です」
「ふむふむ、仕事は何を?」
「無職です」
「あー不景気だもんね。住まいは?」
「今月末に退去予定で、次の部屋は決まっていません」
「……今月末って、あと10日しかないね。あぁ、彼氏の家にお世話になるとか?」
「昨日振られてたの見てましたよね? 彼と結婚したくて仕事を辞め、引っ越しも決めたんです」
「でも29歳ならそこそこ蓄えあるでしょ。ゆっくり自分を見つめ直す時期かも」
「いえ、結婚資金に使ってしまったのでありません。お金がないので企画に参加しました」
「……」

 矢継ぎ早に質問するヨリだが、斜め上の回答が連続し反応を詰まらせた。

 あかりの強烈な近状は調理のしがいがあり、配信者として美味しい。それと同時に扱いが難しい。当たり前だがヨリより目立たれると困る。

「お姉さん、生き方攻め過ぎじゃない?」

 ヨリは会話のスピードを緩める。

「いやぁ、昔から猪突猛進というか、思い立ったら吉日というか、後先考えずに行動してしまうんです」

 乾いた笑いを浮かべ、あかりは膝の上で拳を握った。

「オレが言うのもアレだけど、そんなに結婚したいの?」

 後悔滲む仕草をヨリは見逃さず、掘り下げる。

「まぁ、はい」
「なんで?」
「それは適齢期ですし、周りの皆もしていて。あと家族を安心させたいとか、授かれば孫を見せてあげたいとか……こういう気持ちはおかしくないですよね?」