なんて心配は、残念ながらもう遅かったらしい。




「赤」


「っ、うるさいっ…私、ヤノくんみたいな誠実そうな男の子の方が好きだから」




咄嗟にでた言葉だった。



だって一ノ瀬くん以外で関わりある男の子なんてヤノくんぐらいだから。


だから、そんなに深い意味なんてないし本心でもなかったのに――




「……へぇ、むかつく」






「え……」






その一瞬は、今までの人生で1番長い “ 一瞬 ” だった。







ほのかに体温の残る唇。


感触だって、はっきり……






「寝るわ、オヤスミ」




石化する私の反応を見て満足気に笑った一ノ瀬くんは、ひらりと手を振って何事も無かったかのようにリビングから出ていった。




「……」



―― キス、しちゃった。





そこからどうしたかは記憶が無いけど、たぶん意識が途切れるまで私はずっとぼーっとしていた。





夢だよね?え、これ現実?という疑問と一生戦いながら――