「こいつヤノの存在さっきまで知らなかった女」


「ちょっと、誤解招くこと言わないでよ。ヤノくんの苗字がヤノだと思ってただけじゃん」





右隣にたつ一ノ瀬くんの脇腹に小さく肘鉄をかます。


身長差的にも悔しながらジャストフィットである。




「はは、よく言われる!ヤノじゃなくて綾野 太一(あやの たいち)だよ、太一って呼んでも」

「ヤノな、ヤノ。こいつのフルネームヤノヤノ男だから」




「おいふざけんな旺太誰がヤノヤノ男だ」


「お前」


「むきー!!」




ヤノくんが一ノ瀬くんに掴みかかろうとして片手で制される。




もしかしてヤノくんって雑魚……いや、失礼だやめとこう。


一ノ瀬くんとつるんでるくらいだから不良一味の仲間か何かだと思ってた。




よく考えてみたら、こんな人畜無害そうで頭の上にお花咲いてそうな少年がそんな不良なわけないでしょうよ。


なんて自分頭の中の一ノ瀬くんに従うヤノくんの図を消し去る。