「…一ノ瀬くんと一緒で私の噂もほとんど嘘なんだよ」


「噂なんかだいたい嘘だと思ってる」


「奇遇だね私も」





人間は話を面白くするためについ盛ってしまう。

そう誰かがテレビで言っていた。



私と一ノ瀬くんのケースはまさにそれなんだろう。





「友達欲しいならヤノやるぞ」


「リアクション取りずらいそれ」




ヤノくんは話したこともないし、迂闊にやだよとかいらないよとか言えないから気まずい。




それよりも私からしたら一ノ瀬くんが軽い冗談なんかを言うタイプなのが意外だった。


一ノ瀬くん、話せば話すほどますます謎が深まるばかり。




「やっぱりオオカミっぽいね」


「それ褒めてんの?」


「どうだろう」




いい意味で言えば、孤高というか気高いというか。


そうじゃない意味で言えばちょっとだけ雰囲気が怖い。




「早くパーカー返しに来いよ」


「くれたもんだと思ってた」


「アホ。返せあれ気に入ってんだよ」




やっぱりパーカーを貸してくれた時から一ノ瀬くんは私が同じ学校の叶野羅奈だって気づいてたみたいだ。


まあそうじゃなきゃあんな高いパーカー貸したりしないよね。




一ノ瀬旺太という謎の存在が、少しだけ自分に似ているような感じがしてしまった。


たぶん、そんなことないけどね。