「それでやっと、気づいたの。
出会う順番を間違えた、なんて、きっとウソ。
例えば先に私と出会う約束をしてたとしても、奥さんに会いにいくんだろうなって。
今日みたいに」
菖悟さんの躰のいちばん弱いところを知ってたって、私たちは、両想いじゃない。
今回のリスケで思い知らされてたのに、認めたくなくて見ないようにしていたことが、お兄さんに不満を話していく中でまとまっていく。
あぁ、こんな風に私、思ってたんだって。
わかってたんだ、って、なんだかくやしい。
「それなのに、まだ期待してるの。
ごめんって言われた以上、今日は会えるわけなんてないのに、ここに居れば菖悟さんが息を切らしてきてくれる気がして。そんな期待をしてたくて。
奥さんと菖悟さんが正解なのに、私たちが正解なんだって、思いたい自分がきえない。明るいふたりの未来を信じていたくなっちゃうの。なにやってるんだろう、って思う自分も、たしかにいるのに」
"振り向いてください"
アルコールと勢いに任せて喋る私に、正直で切実な、私の本音を隠しもったアプリコットフィズを静かに口にしながら、空気で相槌をくれるお兄さん。
自然とタメ語に切り替わっていて。
心地もよくて、つい、喋りすぎてしまった。
「……バカだよね」
反応がこわくなってダイキリを口に含むと、なぜだか不思議と、ライムの酸味が舌の上で際立った。
飲むときの気持ちによって、味って変わるのかな。
そんな、一歩外れたことが頭に浮かんだタイミングで、お兄さんが息を吸って吐く音が聞こえた。
「ま、男も男だと思うけどね。
そんなインスタントに愛情もどきを振りまく奴、例えその、唯一の権限?得たとしても、同じことするでしょ」



