「恋愛も、同じ…?」
それは、誰と関わるか、誰と恋愛をするかで、自分の味も変わるということ?
それとも、どんな自分でいるかが、恋愛の味を変えるということなのかな?
聞きたかったけど、右手でジントニックの入ったグラスを掴んだまま、まっすぐに、前を見据えたままの横顔に、なにも言えなくなる。
「俺さ、実は母親が不倫しててできた子どもなんだよね」
「…え、」
「たしか母親も、職場の上司との不倫でさ。
口先だけの約束に嫌んなって俺をつくったか、後先考えずに快楽を求めて俺ができちゃったのかはわかんないけど。結局、子どもができたところで、不倫相手だった俺の母親は選ばれなかった。
残ったのは、慰謝料と、世間からの冷たい目だけ。友達はもちろん、家族からも疎まれてて。
子どもながらに何やってんだよ、って思ったよ」
残ったのは、慰謝料と、世間からの冷たい目だけ。
そんなさみしいことを言うこの人に、お母さんにとってあなたは、唯一手元に残った大好きな人のカケラだと思う、なんて、薄っぺらいこと、思っても、口が裂けてもいえなかった。
俺のせいで傷ついた人がいる事実は消せないって、言わせてしまう予感がして。さわってはいけないものを、抉ってしまう気がして。
まるで、他人事のように、淡々と明かされていく事情に、ついさっき、ダイキリで潤したばかりの口内が、からっからに渇いていく。
同時に、なんで、このバーで何度か顔をみただけのただの客を、この人がここまで気にするのかが、よく、わかってしまった。
「だけどそんな母親でもさ、今はいい奴に出会えたみたいで、結構いい表情(カオ)して過ごしてるんだよ。
だからつまり、そういうことでしょ?」



