「…そういうこと、になるってことだよね?」
「いや俺はさ、ここでの君たちしか知らないからさ、わかんないけど。今は、いい恋愛とは、いい難いんじゃないの?」
「…っ、そう、だよね。
それは真琴にも絶縁されるよね」
図星でしかなくて、カウンターに突っ伏してしまいそうになったところに、お兄さんが頼んだドリンクが到着した。
眩しいほどに透明なそれは、たぶん、私でも知ってる。ジントニックだと思う。
ジンをトニックウォーターで割った、シンプルなカクテル。いつ飲んでもホッとするその味を、今たまらなく飲みたくなったのは、真琴を思い出したからなのか。
そういえば真琴は、いつも、ずっと、飽きもせずに、ジントニックを飲んでいた気がする。
「真琴?」
「あ、ごめん。友達。10年来の付き合いなのに、菖悟さんのこと話したら拒絶されちゃった。当然だよね」
「あー、なるほどね」
じーっと、濁りひとつないそのグラスを見つめていたからか、「飲む?」と差し出されたそれに、ふるふると首をふる。
今ジントニックなんて飲んだら、真琴に会いたくてたまらなくなりそうだ。今さら、ごめんなんて言えないのに。
代わりにダイキリを飲むと、ほんのりとしたあまさが沁みて、なんだか泣きそうになった。
そんな私をみて、涼やかなグラスの音をひとつ、静かに鳴らしたお兄さん。なんでこの人は、こんな見ず知らずの女のしょうもない話を、こんなに真剣に、面倒くさがりもせずに聞いてくれてるんだろう?
なんて、ふと思った。
「ダイキリはさ、基本的にホワイトラム、ライム果汁、砂糖を加えて作るんだけど、その微妙な割合の差で随分と味がかわる。場所によっては、合わせるラムの種類を複数用意してるところもある。
そうすると、コクもあまさも風味も後味も、全然違うものになるんだ。
不思議じゃない?全部、ダイキリはダイキリなのに。
…恋愛も、同じだと思うよ」



