あのチョコレートは結局捨てられなくてもう一度引き出しに戻した。

もう食べることはできないけど、無下に捨てることもできなくて私が小鳩の想いを抱えてるみたい。


…なんで人の想い抱えなかきゃいけないかなぁ!?


よりによって小鳩の琴ちゃん先生への…っ


「冬休みが終わったらまた本格的な活動始めようね!」

森中部長がパンっと手を叩いた。

その音にハッとして落ちていた視線を変えた。

「文化祭もそうなんだけど、年明けがチョコ研にとっては一番の大イベントだから!」

「大イベントって何するんですか?」

「やっぱりチョコ研と言えば…!魔法のチョコレートがないあのイベントはいろいろつらいんだけどね」

悔しそうな表情を浮かべる森中部長、そらぴょんも黙ったまま何も言えてなかった。

私だって…。

魔法のチョコレートからも遠ざかっちゃった。

もう欲しいのかもよくわからないけど。

でも欲しい女の子たちはいっぱいいる。

小鳩がチョコ研やめたことはたぶんあまり知られてないけど、魔法のチョコレートに心を馳せてる子たちはまだいるから。

好きな人に告白をしたいけど勇気が出ない女の子たちが、一歩踏み出す力が欲しくて少しでも自信が持てるならって希望にしてる小鳩結都にしか作れない魔法のチョコレート。

「あ、みなさん今日は揃ってますか?」

何の足音もせず急にガラリとドアが開いてビックリした。

控えめな声を出しながら白沼先生が入ってきた。

「あ、白ちゃん~!フィナンシェ食べるーーー?」

一言目がそれってすごい。
顔を見るや否や持ってたフィナンシェを差し出していた。
すっかり森中部長の前でもそらぴょんはそらぴょんになっていた。

「あ、あぁ、ありがとうございますっ」

両手で器を作るように受け取る白沼先生のが生徒っぽいし。

「白沼先生どうしたんですか?」

「あ、森中さん!こないだの話ですけどっ」

「魔法のチョコレートの?」