チッチッチッと目覚まし時計の秒針が静かな寝室に響く。
 5時 チッチッチッ『ピッ』目覚まし時計が鳴る瞬間カチャツと布団から長い腕が伸び時計を止めそのまま起き上がり両腕を上げ「うぅぅぅん」と伸びをする。
 横で寝息をたて1ヶ月前に拾ってきた黒の仔猫抱いて丸まっている彼女のおデコにチュッとキスをして小さい声で「おはよ」と声をかける。
 彼女を起こさないようにそぉーとベッドから降り寝室を出て洗面所に向かう。
 今日は僕が朝ご飯を作る当番、メニューは鮭に納豆、生卵に海苔、ご飯に味噌純和風。
 6時28分 ガチャリとドアが開き仔猫を抱えて彼女がアクビをしながら入って来る仔猫もいっしょにアクビをする。
 6時30分 テレビから天気予報のお姉さんが「おはようございます」の声が聞こえる。それに応える様に「おはようございます」「ニャー」とテレビに頭を下げる。コレは彼女の日課になっている。
 「早く顔を洗っておいで」
 「はーい」と仔猫を下ろしドア開けて出ていく。
 仔猫はゆっくりと近ずいて足元で「ニャーン」と鳴き餌のさいそくをする。
 「ちょっと待ってろもう少しで終わるから」
 「ニャー」とスエットのズボン登って来る、コレは仔猫の日課おかげでいつもギリギリまで下はスエットのまま、彼女はそれを忘れていたせいでこの間ストッキングとスカートをダメにしてしまい顔が真っ青になった。
 テーブルに朝食の準備をして仔猫は餌をあげているとドアが開きメイクを完璧にしスーツ姿の彼女は臨戦態勢寝起きの可愛らしさが微塵もかけらもない、この時は仔猫も近ずかないオーラで分かるのだろうか。
 「今日も美味しそうだねいただきます」と手を合わせて食べ始める。


 「ご馳走様でした」と彼女は手を合わせた後僕の分まで食器をさげて洗い始める、その間僕は仔猫をゲージに入れ会社に行く準備を始める。
 「行く準備できた?」
 「できたよ」
 「じゃあ行こっか、お留守番お願いね」
 「ニャン」
 8時25分 玄関に鍵をかけマンションの廊下を二人で歩く、エレベーターの方から同じ階のホストの男性が歩いてくる大きなアクビをしながら。
 「おはようございます」と営業スマイルで彼女は挨拶をする。
 「ウッス」と応える。顔が赤く見えるのはきっと残ってる酒のせいだろ。
 「おはようございます」と僕も挨拶をする(人のモンに手をだすなよ的なオーラを出しながら)
 「おはようございます」と背筋を伸ばして応える。
 彼女は歩くのが早い僕はいつも追いつくのがやっと。
 「ねぇなんで私の時は『ウッス』で君の時は『おはようございます』なんだろ?」
 「さぁね」
 「手つなごうよ」と彼女は手をだす。
 「遊びに行く時ね」と断る、本当は手を繋いでラブラブを見せつけたいけど、どう見ても僕が彼女に引っ張られている様にしか見えないから繋げない、僕が引っ張って歩いている様に見えるまで努力するのみ。
 その日はくるのだろうか。