先輩、お久しぶりです


「お邪魔します」


 結局来てしまった。
 コーヒーがお返しだと思えば、お互い気を遣わなくて済みそうだったから。


 それに昔も今も先輩が私に何かしてきたことはないし、私の家に来た時も何もなかった。
 だからというか、そんなに警戒しなくても大丈夫だと判断したから。
 あと、先輩の部屋も見てみたいという好奇心もあったけど……。


「すぐコーヒー淹れるから適当に座ってて」

「あ、はい」


 先輩はそのままキッチンに入って、バタバタとコーヒーの準備を始めた。
 私は部屋を見渡して呆けている。


 一人暮らしにしては広い部屋。
 玄関から入ってくるとドアが2つあり、その反対側にもドアが2つあったから2LDKといったところ……。
 リビングダイニングも広く取っていて、ゆったりと過ごせる空間になっているのは、壁にある大きな画面のテレビを見ながらゆっくりするためだろう。


 そしてイメージ的に黒を基調としたシックな感じだと思っていたけれど、白を基調に壁にはカラフルな絵が飾ってある。シンプルだけどお洒落な雰囲気が意外だった。
 床には少し毛足の立ったラグが敷かれていて、その上にローテーブルと後ろにはソファが置かれている。


 さらにキッチンの前にもダイニングテーブルが置かれていて、一人暮らしというより家族で暮らしていても十分なくらいのスペースだ。


 学生の頃に美香たちと一緒に先輩の部屋を訪れたことがあったけど、あの時は安くて古いアパートだったからこんな風に整頓されていなかったし、こんなに広くもなかった。
 もちろんあの頃のままなわけはないだろうけど。


 ボーッと見回していると、キッチンからガリガリと鈍い音がしてきたため、音の出元を確認しようと先輩を見みると木箱のコーヒーミルで豆を挽いているところだった。


「豆から挽くんですか?」

「あぁ、コーヒーは挽きたてが美味いだろ」


 そうかもしれないけど、もっと簡単なインスタントコーヒーかと思ってたから正直意外だった。
 いや、専門店でわざわざ豆を買うくらいだから本格的なのは分かってたけど、実際豆挽きしてるのを見ると本当にコーヒーが好きなんだと納得してしまう。