「でも、それだと奢ってもらってばかりになるんで」
「却下」
「へ!?」
却下って……。
断ることを却下? いやいや。
「でも――」
「とりあえず今日は終わりな」
「……はい」
ピシッと遮るように言われてなにも返せず、なぜか不機嫌な態度の先輩に歩きすぎて疲れてるからかな? と考えを巡らせた。
確かに私もお腹は満たせたけど、脚は相変わらず疲れている。次もまた買いに行く約束もしたし、今日は素直にこのまま帰った方がいいかもしれない。
そう思って駅の方へ向かっていたけれど、百貨店を出てからお互い無言のままで、先輩は真顔でただ歩いていくだけで何も話さない。
相当疲れてるんだな……と、気を利かせて同じように話しかけず歩いていると、先輩がふと立ち止まって私を見下ろした。
「千春」
「はいっ」
「このあとまだ時間ある?」
数歩前に出てしまった私は、立ち止まって振り返り先輩を見た。
外は夕方になったばかりで、はっきり言って帰るにはまだ早すぎる時間帯ではある。
このあいだの珈琲豆専門店みたいに他に寄るところでもあるのだろうか。
「あ、はい。どこか行くんですか?」
「俺の家、来ない?」
「――えっ!?」
大きな声で驚いたため、近くにいた人がこちらを一斉に見た。
「美味いコーヒーあるからどうかと思ったんだけど。飯作ってもらったお返しとして。これなら気を遣わないないだろ?」
「あ……」
コーヒー……お返し……。
気を遣わないって言われても先輩の家に行くとなると、緊張して余計に気を遣いそうだけど。
どうしよう。
でも奢ってもらってばかりだし断るのも申し訳ない気もする。
なんとなく加藤さんの残像がチラついて二の足を踏んでしまう気持ちもあるけれど……。



