ギロッと睨みつけたけど、先輩は口に手を当てたまままだ肩を震わせ笑っている。
こっちはヒヤヒヤして怖かったのに!


「もういいです。じゃあ今日は一人で探して下さい」


いつまでも笑われていると無性に腹が立ってきて、先輩を放ってプイッとそっぽを向いて反対方向へ歩き出そうとした。


「ごめん!」


慌てて腕を掴まれ引き止められたけど、本気で帰ろうとは思ってなかったから、真剣な顔で言われると余計に捻くれてしまう。


「男が引き退らなかったら声かけようと思ってたんだ」

「だったらもっと早く声かけてください」

「うん、ごめん」


困った顔をして素直に謝られたせいか、それ以上何も言えなくなってしまった。
というより、そもそも先輩は悪くなくて声をかけられた私がしっかり断るのが当たり前で。
完全に八つ当たり。やってしまった……。


「……すみません。先輩のせいじゃないのに」

「いや、俺が早く声かけてれば良かった。ごめんな」


しゅんとなる私の頭をポンポンと優しく撫でてくれた。見ると困ったような苦笑いをしていて気を遣ってくれているのが分かる。


はぁ……何やってんだろ私。


分からないように嘆息をもらし、心の中で大いに反省しながら店内に入った。