「あ〜……う〜ん、どうしようかなぁ〜もうすぐ友達来るんだけどぉ〜」


態度を180度変え、シナを作って猫なで声で応えてみた。
すると男は分かりやすく嬉しそうな顔になっている。


「行きましょうよ、お友達来るまですぐそこのカフェでいいんで。お姉さんと一緒にお茶したら帰るから。ね」

「え〜いいんですかぁ〜?」

「もちろん!キミみたいな可愛い子とお茶出来るなら何杯でも奢っちゃうよ」

「おにぃさんありがと〜。だけどぉ、あたし男なのにいいのぉ〜?なんなら待ち合わせしてるもう一人の『彼女』と一緒に行きましょうかぁ〜?」


そう言うと驚いた顔をして「は?男かよ!チッ」と舌打ちして、さっさと去っていってしまった。


「ふぅ」


ドキドキしたけど男だという嘘が通用してよかった。
もし男でもいいと言われていたら、抵抗するのに時間がかかったかもしれない。でも騙すならもっと野太い声出した方がよかったかもなぁ。


そう思っていると、いつのまにか後ろにいた先輩が笑いながら声をかけてきた。


「ブハッ!誰が彼女だって?」

「き、来てたんですか!?」


今のやり取りを聞かれていたのか、拳を口に当てて笑いを堪えつつ今にも爆笑しそうだ。
さっきの猫なで声を聞かれていたんだと思うと、みるみる顔が赤くなってくる。


「お前ほんと男あしらうの上手くなったよな」


そんなことはどうだっていい!


「人聞きの悪いこと言わないでください!それより来てるなら助けてくれてもいいじゃないですか」

「声かけようと思ったけど面白かったから」

「悪趣味!」