先輩、お久しぶりです



 翌日、冴えない頭を動かしながら淡々と業務をこなしていた。
 昨日の帰りの光景が頭から離れなくて、睡眠不足になっている。


 何度考えても分かるわけがなくて、結局加藤さんは人妻で子供もいるんだから、先輩とはただの知り合いだろう。という結論に至った。


 でも腕を組んで歩くほど親しい関係なのは分かる。

 もしかしたら、このあいだ先輩が物思いに耽ったのは彼女を想ってだったのかも……と、思考があっちこっちに飛んで目を瞑っても色々考えてしまい余計に眠れなくなったのが睡眠不足の原因。


 気になるなら直接聞けばいいんだろうけど、そんなこと聞いてどうするのか。実際そんなことを聞く間柄じゃないし……と真っ暗な部屋の天井を見つめながら何度も自問した。


 本当なら気にしなくていいはずの関係なのに、ここ最近の先輩の言動に少なからず心が揺さぶられている自分がいて、気になってるだけかもしれない。


 でも、なるべく、出来るなら……気にしないほうがいい。
 心の中に引っかかる何かを気にしたらダメな気がする。先輩とはもうどうにかなることはないんだから。

 そんなことを思いながら重い足取りで秘書室を出た。


 ロビーで待ち合わせをしていたのは、昨日約束した開発企画本部の村元さんと同じく同僚の松下さん。


「行ったことあるかもしれないですけど、近くのイタリアン行きません?」

「いいですね」


 お二人とは交流会の飲みの席で話す機会はあったけれど、ちゃんと顔を合わせて食事するのは初めて。
 ちょっとドキドキしつつ、沈んだ気分を上げるように口角を上げて印象良くしようと心掛けながら、イタリアンレストランへ向かった。


「若宮さんて秘書課の人の中で一番フランクな感じですよね〜。親近感湧いて嬉しいです」

「ありがとうございます。私こそなかなか親しくしてくれる方がいないので、誘っていただけて嬉しいです」