先輩、お久しぶりです


 今来た彼女が以前ここにいた人ということは分かるけど、全く知らない私は重い空気のなか恐るおそる正体不明の彼女が何者か聞いてみた。


「あ……あの、さっきの方はどなたですか? 役員の奥さんとか?」

「あ〜、加藤っつってね、若宮ちゃんと入れ替わりで出てった元秘書。仕事しないくせに上司に媚びばっか売ってたの。結婚でもなんでもいいから出てってくれて清々してたのに、何しに来たんだっつの! あーっ! 久しぶりにムカついた!」


 なるほど……相当嫌われてたということだけは分かった。


「旦那さんが地方の大病院の副病院長らしくて、それで嫁の立場になった自分も偉くなった気がしてあんな上から目線なんでしょ。木村役員にとり持ってもらって結婚したから、挨拶に来たんだと思うよ」


 別の先輩の青山さんがスラスラと興味なさそうに、でもやけに詳しく教えてくれた。


「じゃあ玉の輿なんですね、凄い」

「それだけが目当てで相手探してたからね。あ、でも彼は例外か」


 ――彼?


「いや、見る目あったんでしょ。加藤なんかに追いかけ回られて迷惑してそうだったし」

「けど、男ならああいう猫被りが好きなんじゃない?女の前では本性あらわして嫌なやつなのに」

「まあだいたいの男はあの見た目だけでホロっと惚れるわよ。だからあんなんでも玉の輿に乗れたんじゃない」

「なんでもいいけど、いなくなってくれて本当良かったわ」

「当時の秘書室は殺伐としてたもんね……」

「アイツがいるだけでストレス半端なかったもの。どれだけ辞めろって呪ってやったか」

「あははは! みんなの願いだったよね」


 もう、怖いこわい〜!

 先輩方が口々に加藤さんとやらの悪口を言いまくっている。
 ブルブル、女の世界って恐ろしい……。
 私も言われないように気をつけないと!