それならと私は緑茶とちょっとしたお菓子の準備をすることにした。


初めは違和感があった昂良先輩の存在も、慣れてくるとそこにいる姿が当たり前のような気分になる。


これが本当の恋人同士なら、幸せなひとときに感じるんだろうな……と、身も蓋もないことをカップにお茶を注ぎながら考えてしまった。


しばらくして洗い終えた昂良先輩が戻ってくると、なんの違和感もなく普通に私の隣に座ってきた。
わざと離してカップを置いたのに、気にすることなく手前に引き寄せてズズっとお茶を啜っている。


ここで近すぎるからと私の方が距離を取れば、変に避けたと重い空気になると思い平静を装って、同じようにお茶を飲んだ。


「コーヒーじゃないから物足りないかもしれないですけど、よかったらクッキーあるので食べてください」

「サンキュ」

「お茶ってゆっくりしたい時に飲むとリラックスできるんですよ。私は最近コーヒーよりも緑茶ばかりなのでおやつに和菓子とかよく食べるんですけどね」


なぜか緊張して、ペラペラと喋ってしまった。


変な距離感にドキドキしながら、しばらく二人でお茶を飲んでゆっくりしていた。
何かを話すわけでもなく、集中して見てるわけでもないテレビの雑音だけが部屋中に鳴り響いている。

すると、不意に昂良先輩がふぅーと息を吐いてからボソリと呟いた。


「なんか、こういうのいいかもな」

「え?」

「喋らなくても二人でまったり出来る時間」


そう言われて、やけに落ち着いて見てもいないテレビをゆっくり眺めているこの雰囲気が、違和感がなさすぎて自分でもちょっと驚いた。


先輩はすっかりこの部屋に溶け込んでいる。
私はドキドキしながらも、隣に先輩がいることに少しずつ慣れてきていることに気づいた。