先輩、お久しぶりです


 私は美香へ、昂良先輩は陵介先輩へ贈るコーヒー豆をそれぞれ決めた。


 先輩は自分用のコーヒー豆も買い、美香たちに贈るコーヒーは賞味期限のことも考えて、他の贈り物が決まった時にあらためて買いに来ることにした。


 とりあえず一つ目の贈り物が決まってひと安心。
 とはいっても、まだまだ探さなければいけない。


「千春は自分の分は買わないのか?」


 お店を出て駅へ向けて歩いていると、隣で歩く先輩から話しかけられた。


「そうですね。ドリッパーもサーバーもないので家ではもっぱらインスタントなので」

「ふーん、そっか……」


 大学時代、珈琲研入ってたくせにインスタントかよとか思ってそうな顔つきだな。
 私は先輩ほどマニアックじゃないだけなんです。


「このあと行きたいとこある?」

「ないです。あとはスーパーに寄って帰るだけなので」


 休日なのに一人分の材料を買うだけの、つまらない用事しかない。


「晩飯家で作んの?」

「はい」

「へぇ、お前って料理出来たっけ?」


 ちょっと、聞き捨てならないな。
 料理すら出来ないと思ってる!?


「人並みには」

「ほんとに食えんの?」

「当たり前じゃないですか。――て、なんですか失礼ですね。食べたこともないくせに」


 ほんと失礼。
 自慢じゃないけど腕はいいんだから。


「だったら食わせてよ。美味いかどうか」

「はぁ!?」


 いやいや、何言ってんの!?
 どうしてそうなる。
 分かりやすく変な顔で返事してしまった。


「自信ないか」

「ありますよ!」

「なら食わしてよ」

「い、いいですよ! そのかわり美味しかったらどうしてくれるんですかっ」

「んー……欲しいもの買ってやる」


 顎に手を当てて、少し悩んでから不敵に笑った先輩。
 だったら私のプライドに賭けて美味しい物を食べさせて、その減らず口を叩きのめしてやりたいという気持ちが大きくなった。


「いま言ったこと後悔しないでくださいよ」

「当然だろ。まずは食わせてもらってからだけどな」