先輩、お久しぶりです


 私もさっき思いついたことを聞くため、思いきって店員さんに話しかけてみることにした。


「あの、すみません。ノンカフェインのデカフェコーヒーってありますか?」

「ございますよ。あちらの棚にあるコーナーでしたら種類揃えております」

「ちょっと見てもいいですか?」

「よろしければご説明いたしますよ」

「あ、じゃあお願いします」


 そう言って店員さんについて行き豆の種類や味の特徴などを聞いていると、スッと背後から昂良先輩が声をかけてきた。


「何か欲しいものでも見つけたのか?」

「は、はいっ……美香にあげようと思って」


 びっくりした!
 急に耳元で囁くなんて不意打ちすぎる。
 心臓が飛び出るかと思った。


「あぁ確かに。妊婦だもんな」


 先輩は何食わぬ顔をしながら、ぴったり張り付くくらいの距離で私の背後からデカフェコーナーを覗き込んでいる。


 耳に息がかかるほど接近されてるから、身動きも取れず店員さんの話にも集中出来ないでいる。


「――あとは味などの好みになりますね」

「そ、そうですね。ありがとうございます。少し考えてみます」


 店員さんが私たちを見てにこやかに離れていくと同時に、サッと先輩から逃げた。


 あからさまに避けたつもりが、逆に肩を掴まれ動けなくなった。


「――っな!」

「片岡の好みは分かってんの?」


 なおも肩を掴んだまま耳元で囁くように語りかけてくる。


「……なんとなく」

「妊娠中は味覚変わるって言うし、無難な味の方がいいんじゃねぇの?」


 どうして離れてくれないのか、肩と耳に意識がいって変に力が入ってしまう。