先輩、お久しぶりです


「行きつけの純喫茶のオーナーがここで買った豆で飲ませてくれて、それ以来はまって自分で買って飲んでみようと思ったのがきっかけ。それからたまに来て買ってるんだ」

「そうなんですね」


 そして、いつも以上に饒舌に語っている。


 種類が沢山あって何が美味しいとか私は詳しくは分からない。
 珈琲研にいた時は飲み歩くことだけ楽しんでいたから、種類などはあまり考えず適当に活動していた……。


 けれど先輩は、ちゃんとコーヒーが好きで入ってたんだろう。
 さっきからやけに興奮気味で、真剣に豆を覗き込んでいる。


「それで先輩はどれが好きなんですか?」

「このマンデリンだな。酸味は少なく苦味が強いのが特徴」

「へぇ」

「あとはコロンビアとグァテマラと、マンデリンとブラジルを混ぜたブレンドが好きかな。コクが深めのやつな」

「はぁ……」

「あと、このロブスタとモカをーー」


 そういえば、美香がインスタントのノンカフェが美味しくないって言ってたっけ……。
 デカフェで美味しい豆があれば、挽いたものを贈ったら喜ぶかな?

 何が美味しいだろ。


「――千春」

「えっ?」


 聞いていたつもりが、ジト目で見られているのに気がついた。


「お前……まったく興味ないだろ」

「そ、そんなことないですよ」

「嘘つけ、こっちが聞いてんのに返事もしないだろ」

「すみませんっ。ちょっと考え事してました」

「やっぱな。早く決めるからちょっと待ってろ」


 そういうと、高い背を屈ませて豆の匂いを嗅いだり、説明書きを読んだりと集中しだした。