先輩、お久しぶりです


「ここのコーヒーも美味いらしいぞ」

「あ、ここってこのあいだ言ってたお店ですか?」


 いきなり話しかけられたと思えば、以前美味しいコーヒー店に誘われて曖昧な返事でギクシャクした時に言っていたお店なのかと返した。


「いや、そことは違う」

「……そうですか」


 沈黙が流れる。


 なんだかこの雰囲気がいたたまれない。
 会話が続かないのもそうだけど、この空気感というかお互い気まずい感じなのがひしひしと伝わる。


 昼間に『裏切られた』という言葉を聞いて、どういう意味なのか悩んでいたのに、その日にこんな状況でどうしたらいいのか。


「ところでご相談てなんでしょう? 陵介先輩たちに贈る物ですよね」


 黙っているのに耐えられなくて、早速本題に入った。


「あぁ、結婚祝い。今さらご祝儀渡すのも何だし、何か物を贈りたいんだけどどういったものが必要か分からなくて」


 まあ、そうでしょうね。
 これまでまったく交流が無かったのに、どんなものを贈ればいいかなんてすぐには思い浮かばないだろう。


「それならまずは金額を決めたらいいんじゃないですか?」

「確かに。久々に会うし通常のご祝儀に上乗せしたくらいか」

「それもそうですけど……あと、お忘れだと思いますが」


 ここでちょっとイジワルを言ってみたくなった。


「結婚もですけど引っ越しもしましたし、今度赤ちゃんも産まれるんです。そういうの含めても相当な金額になると思いますよ」

「……それは考えてなかった」

「個別で贈るかまとめて贈るかも考えないとですけど、通常の倍はかかると思っておいたほうがいいと思います」

「それなら尚更なに贈っていいか悩むな……」


 悩め悩めっ。
 悩みまくって今までの私たちに対する態度を改めるんだ。


 すると腕組みをして夜景を見ながら悩んでいると思ったら、先輩は突拍子もないことを言った。