先輩、お久しぶりです



 ロビーへは5分も経たずに着いてしまう。

 大半は定時退社の人ばかりで、ゾロゾロと会社を出て行っている。


 その波の中にひときわ目立つ長身イケメンの昂良先輩が歩いてきた。


「待たせたな」

「いえ、私も来たばかりなので」


 妙な気持ち。


 同じ会社でかつての片思いの人と、社会人になって待ち合わせをするなんて、こんな不思議なことが起こるとは考えもしなかった。


 人生って何が起こるか分からない。


「とりあえず、飯でも食いながら相談させて」

「はい」


 このギクシャクした関係が改善したわけでもないのに2人で食事って……ご飯、喉通るかな。


 そんなことを考えながら連れて行ってくれたのは、会社からしばらく歩いたホテルの中にあるカフェレストラン。


 かしこまった雰囲気でもなく、カジュアル過ぎず照明も程よく清潔感もある。
 そして夜景も一望できて、なんとも女性好みのレストランだった。


 先輩は慣れた感じで席に座り、私はぎこちなく席に着いた。


 こういう雰囲気のお店よく来るのかな? それとも女性をエスコートするの慣れてるのかも。


 と、余計な思考が頭を巡って緊張してしまう。


 学生時代に行ったお店なんて、雰囲気なんか気にしない気さくなお店ばかりだったから、こんな素敵なレストランで先輩と食事するのには慣れていない。


「千春、何にする?」

「あっ……えと、じゃあ……この合鴨の春野菜コースで」


 かしこまりました、とウェイターがいなくなるとまた緊張してきた。そして気まずい。


 先輩から千春呼びされるのは慣れてたはずなのに、二人きりになると途端に意識してしまう。