午後からは秘書室の先輩方は会議に出席して、ほとんどいない。
私は留守番のためデスクワーク。
さぞ仕事が捗っているかと思いきや、昂良先輩の言葉が気になって頭から離れない。
『裏切られた』
裏切られるような関係性ってなんだろう。
その言葉どおりに受け取ると……私たち付き合ってた、とか?
いやいや、確かに二人で頻繁に出かけたりしたけれど、付き合ってた記憶はない。
まして『付き合おう』の言葉も無かったのに……。
分からない。分からなすぎて混乱する。
それに、どうして私の携帯番号をいまだに知ってたんだろう? 機種変えた時に消えたって言ってたよね。
机に肘をついて頭を抱えて苦悶していると、脇に置いていたスマホが突然震えた。
昂良先輩かと思い、慌てて見るとラ◯ンが届いていたのだけれど、差出人は「聡太」の名前。
まさかの元カレからだった。
誰もいないのをいいことに、中身を確認した。
『千春久しぶり! 元気にしてたか? 転勤してから色々あったけど、また今度そっちに戻ることになったんだ。もし良かったら一度飯でも行かない?』
就職と同時に別れてから3年。
特に連絡を取り合ってたわけじゃないのに、こんなに普通に連絡をくれるのは、今じゃすっかり友達だということ。
いや、聡太とは本当に友達だった。
付き合っていても、ベタベタした恋人同士というよりは、気の合う男友達といった方がしっくりくる関係だった。
付き合ったきっかけは、先輩を忘れるために打ち込んだバイト先で知り合った。
大学は違うけれど同い年ということもあり、話が弾んだのがきっかけで仲良くなって、聡太からの告白で付き合うことになった。
私も嫌いじゃなかったし、一緒にいて楽しかったから悩まなかった。
聡太のおかげで、先輩のことを少しずつ忘れることが出来たのも、本当にありがたかった。
だから聡太が就職と同時に地方へ転勤になっても、悲しくて別れたというより背中を押して、精一杯頑張ってこい! という友達感覚で送り出せたのだ。



