やけに無表情な顔つきで怒ってる感じでもなさそうだけど、何を考えてるのか分からない。
すると先輩は演台に腕をかける姿勢で体重を乗せ、顔を近づけてきた。
私は驚いて動けず固まってしまった。
先輩はおもむろにポケットからスマホを取り出し、片手で画面を操作している。
「じゃあ鳴らすから登録して」
「あ……はい」
ビックリした。
何かあるかと身構えてしまった。
私もポケットに入れていたスマホを取り出し、タップする。
「これで出来ただろ。あとラ◯ンは適当に追加しといて」
「はい……」
やっぱりどこか機嫌が悪い。
多分、このあいだコーヒー店に行くのを渋ったからなのか、無視するようにエレベーターから降りたからなのか、原因があり過ぎて分からない。
「陵介先輩も喜んでましたよ」
「へぇ」
「……」
会話が続かない。
って別にもうご機嫌を取らなくてもいいんだから無理して会話しなくていいんだってば!
そう思って無理やり気持ちを切り替えてから、また黙って作業を続けることにした。
すると少し長めの間のあと、ふいに先輩がボソッと呟いた。
「連絡先なんで消したんだ」
「え?」
撤去も終わって、あとは運ぶだけというのにまだ演台の前に立って私を見ていた。
「いや、俺が拒否してたからか……」
そう言われて前を向くと、近距離で昂良先輩と目が合った。
「そうですね。私のこと嫌ってる人の番号残してても仕方なかったんで」
「――っ」
どうしても返す言葉が刺々しくなってしまう。
先輩は何か言いかけたけれど、飲み込んで大きくため息を吐いた。
「別に嫌ってたわけじゃない。あの時は俺も……裏切られたと思ったから」
「え?」
ーー裏切る?
なにそれ……
「それって、どういう……」
「とりあえずサンキュ。昼飯食い損ねるから行くわ」
言葉を遮ってそう言うと、振り返りもせず出て行ってしまった。
私は会議室から出ていくその後ろ姿をただボーッと見つめていただけだった。
裏切るって、なに……?



