見ると的場さんだった。
そしてもう一人サッとこちらへ振り向いた人は、昂良先輩。
目が合った瞬間ドキッとしたけれど、昂良先輩はまたすぐに向き直ってパソコンの配線を片付けだした。
「あ……こんにちは。すみません、次うちの会議なので使わせていただきますね」
「やったぁ、こんなところで千春ちゃんに会えるなんて今日はラッキーだな」
的場さんは私に近づいてきて、嬉しそうに話しかけてきた。
「あの、邪魔しないようにセッティングさせていただきますので、どうぞ作業続けてください」
「全然邪魔じゃないよ! なんなら手伝おうか?」
「色々順番があるのでお気持ちだけ……」
悪いけど的場さんに手伝ってもらう方が手間になりそうだ。
「ところでさ、こないだ言ってたケーキ屋さん考えてくれた? あ、それからあのランチのお店以外にも良いところ見つけたんだよね。千春ちゃんて、韓国料理とか好きかな?」
「あまり行ったことないのでよく分からないですけど」
箱からセッティング用のペットボトルを取り出しながら、話半分で聞いていた。
「じゃあさ、今度また一緒に行こうよ。参鶏湯とかめっちゃ美味しいんだ、そこ」
「そうなんですね」
「その後にケーキ屋さんに行ってもいいし」
「あはは……」
グイグイ来るのを強く断れず、苦笑いで対応していた。
そうやって適当な返事で分かりやすく困っていると、的場さんの上司が見かねて呼んだ。
「的場! 秘書さん困ってるだろ。お前は財務本部にこのファイル返してこい! 終わったら休憩行けよ」
「はーい。じゃあ千春ちゃんこのあと一緒にお昼どう?」
上司に注意されても、まだ食い下がってくる。
的場さんてメンタル強い人だな。
「すみません、午後イチで会議があるので」
「あら〜、了解。じゃあまたあらためて連絡するね」
いや、あらためなくてもいいです……。



