これ以上は余計な気遣いをさせてしまう。
そう思って普段通りの笑顔を見せた。
「もう気にしないで。それよりお祝いは多い方がいいじゃない。なんだったら今までの埋め合わせ分含めて、昂良先輩からガッポリ頂いちゃうってのはどう?」
胸の前で拳を握って悪そうな顔つきで提案すると、美香も同じようにニヤリと笑った。
「それいいね! なんなら千春の分もたんまり頂いちゃおうよ」
「美香、ナイスアイデア!」
「じゃあさ、お祝いは二つ要求して、ひとつは千春の好きな物を買ってもらうように仕向けるのはどう?」
「なるほど。それなら鞄でも買うように言ってみようかな」
「うん、いいじゃん。ブランド物でも要求してみたら?」
「そうだね。私が持ってるのバレたら、たまたま同じの持ってたって言おうかな」
「それがいい!」
陵介先輩は呆れた顔で、私たちのやりとりを聞いていた。
「お前ら……」
私たちの悪巧みが決まったところで、久々にお喋りも弾み、少しゆっくりしてから新婚家庭をあとにした。
◇◇◇
週明けの仕事はいつもより忙しかったけれど、疲れるほどではなくむしろ溌剌としている。
私のいる秘書室は、複数の役員を複数の秘書で補佐していて、個人秘書がいるのは特定の幹部の方だけ。
なので業務もだいたいみんなで分担して行っている。
私はまだ下っ端で雑用も多いけれど、今のところ楽しく仕事は出来ている。
「あ、若宮さん、田中役員の来月の出張先のホテル予約お願いしていい?」
先輩秘書の徳田さんは椅子から立ち上がって、書類の束を脇に抱え今にも秘書室を出ようとしていた。
「あ、はい。かしこまりました」
「あと午後からのB1会議室での会議なんだけど、みんな手が離せないから申し訳ないんだけど若宮さん一人でセッティングお願いしていいかな?ほんとごめんね」
「大丈夫ですよ。会議室の予約取っていればすぐに行けるので」
「じゃあ、よろしくね。私は時間が無いから、説明がてら上に書類届けてくるわね」
「はい、お願いします」



