先輩、お久しぶりです



 ――もう会うことは無いだろうと思っていても、やはりそこは同じ会社。
 偶然に会う確率は退職でもしない限り少なからずある。


 さらに言えば同じフロアで働かなくても、会社ビル近くのコンビニでバッタリ会うことも時にはあるだろう。


「あー……元気か?」


 カフェラテを物色中に隣に立つ男に話しかけられた。
 つい3日前に一緒にランチした時にお会いしたばかりですけど。


「はい、おかげさまで」

「あれ以降、的場から誘われたりしてない?」

「特には」

「そっか……メールも来てないのか?」

「連絡先知らないので」

「あぁ……じゃあ――」


 何が言いたい。
 何かを聞き出そうとしているけれど、埒があかない話し振りに痺れを切らした。


「では、お先です」


 何かを選んでる風でもない昂良先輩をよそに、お目当てのカフェラテがなく違う銘柄の物を仕方なく取ってレジに向かった。


「176円になります」


 そういえば小銭持ってなかった。
 スマホ決済でいいか……と思っていると、隣から突然手が伸びてきて勝手に決済を済まされた。


「何してるんですか」

「俺の奢り」


 私は眉間に皺を寄せて先輩を見上げた。
 彼は何事もなくスマホをポケットにしまっている。


「……ごちそうさまです」


 文句を言いかけたけれど、これくらい奢ってもらっても罰は当たらない。素直に受け取ることにした。